ヴォイドタイムとは何か──月の運行から時間帯を設計する
西洋占星術で「今日の何時からボイド」という話を聞いたことがあるかもしれません。この時間帯に何が起きるのか、そもそもどう計算するのかを説明します。
月が次の星座に入るまでの空白
ヴォイド・オブ・コース(void of course)、略してボイドとは、月がいまいる星座を出るまでの間に、他の天体と主要なアスペクトを一つも作らない状態を指します。日本語では「空亡」と訳されることもあります。
月は約2日半で一つの星座を通過し、その間に太陽や惑星と次々にアスペクトを結びます。ところが星座の終わり近くになると、残り数度のあいだに作れるアスペクトがなくなることがあります。この「最後のアスペクトを作り終えてから、次の星座に入るまで」がボイドです。
長さは一定ではありません。数分で終わることもあれば、丸一日以上続くこともあります。月の位置と他の天体の配置次第です。
どう計算するか
計算手順は三つです。まず月の現在位置を求める。次に、月が現在の星座を出るまでの間に、他の天体と主要アスペクト(0度・60度・90度・120度・180度)を作る瞬間があるかを調べる。最後のアスペクトが成立する時刻を特定する。その時刻から星座の境界に達する時刻までがボイドです。
月は一日に約13度進むので、時間刻みで黄経を計算し、各天体との角度差が主要アスペクトの値に一致する瞬間を探します。実装としては10分刻み程度で走査し、一致点を見つけたら二分探索で分単位まで詰めるのが素直です。
注意点として、どの天体を対象に含めるかで結果が変わります。太陽から冥王星までを含めるのが一般的ですが、小惑星やドラゴンヘッドを含める流派もあります。含める天体が増えればアスペクトの機会も増えるので、ボイドの時間は短くなります。
ボイド中に何が起きるのか
伝統的には「この時間帯に始めたことは実を結ばない」と言われます。契約、申し込み、告白、新規の立ち上げには向かないとされてきました。
理屈としては、月が他の天体と関係を結んでいない=働きかけが外に伝わらない、という理解です。月は日常の出来事や感情の動きを司る天体なので、その月が孤立している時間は、物事が前に進みにくいと考えます。
ただし「何も起きない」のではなく「新しく始めたことが定着しにくい」という方向の読みです。すでに動いているものを進めたり、片付けたり、整理したりする分には支障ありません。むしろ、判断を迫られずに作業に集中できる時間帯として使えます。
過度に恐れる必要はない
ボイドは毎日のように発生します。月が12星座を一周する27日強のあいだに、星座の切り替わりは12回あり、その多くにボイドが伴います。一日の半分以上がボイドという日も珍しくありません。
これだけ頻繁に起きる現象を全部避けていたら、生活が成り立ちません。実際、プロの占星術師でもボイドを重視しない人は多く、ホラリー占星術(質問の時刻でホロスコープを立てる技法)では重視するが、日々の運勢ではそこまで気にしない、という使い分けが一般的です。
現実的な使い方としては、大きな決断や新規の契約がボイド中に重なりそうなら、可能なら時間をずらす。無理なら気にしない。この程度の扱いで十分です。
なお、月が射手座・牡牛座・蟹座にあるときのボイドは影響が小さいという説もあります。これらの星座が月にとって良い状態にあるためとされますが、流派による解釈です。
時間帯の設計に使う
ボイドの実用的な価値は、禁止事項としてではなく、一日の設計図としての使い方にあります。
たとえば「今日は16時からボイドに入る」と分かっていれば、人に働きかける用事や決めごとを午前中から15時台に寄せ、それ以降は一人でやる作業に充てる。こういう組み立てができます。
月が次の星座に入る時刻も合わせて見ると、さらに設計しやすくなります。ボイドが明けて月が新しい星座に入ると、その星座の性質が日常に反映されます。月が牡羊座に入れば勢いが出て、乙女座に入れば細部が気になる、といった具合です。
西洋占星術の日々の読みで、月は最も速く動くぶん最も具体的に効きます。長期のトランジットが「数ヶ月の背景」を示すのに対し、月の動きは「今日の何時から何時まで」という解像度で使えます。
生年月日を入れると、この記事で説明した手順をそのまま適用した結果が出ます。算出根拠も開けます。
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※この記事は占術の仕組みを解説したものです。占いは娯楽・参考を目的としたものであり、健康・金銭・進路など重要な判断は専門家への相談とご自身の検証に基づいて行ってください。